東京都美術館で開催されてた「没後50年 藤田嗣治展」を見てきました。
会期終了間際のギリギリで行ったんだけど、行っておいてよかった。
日本をはなれフランスでその絵を認められた藤田嗣治。
第一次。第二次世界大戦という大きな時代の波の中で、祖国日本とフランスの間ではぐくまれた「乳白色の肌」。
美術学校時代から晩年までの作品を一気にみることができる素晴らしい展覧会でした。
没後50年 藤田嗣治展
会期 2018年7月31日(火)~10月8日(月・祝)
会場 東京都美術館(東京・上野公園)
日本をでてパリへ
藤田嗣治は1913年(大正2年)にフランスへと渡ります。
そして日本の「こうあるべき」と定義された西洋画とは異なる、自由で奔放な絵画の表現。
その自由さに衝撃をうけパリでの創作活動を開始します。
西洋の中で、日本人である自分が表現すべきものは何なのか。
自身のアイデンティティを見つめながら、作り上げられたのが藤田の画風。
面相筆という和筆と墨をつかった繊細な線。
金箔を用いた屏風絵を思わせる背景。
展示されている絵の、そこここに日本を感じさせる部分を見ることができました。
美しい乳白色の肌
藤田の代名詞といえば「乳白色の肌」。
西洋の陶器のドールのような、日本の博多人形のような、美しい肌。
その肌も、年代により表現が異なっていていました。
こうした見比べての気づきがあるのは、作品を一堂に集めているから。
ほんとこんな贅沢な鑑賞ができてうれしかったです。
そうそう、藤田嗣治の「人魚」は、鏑木清方の「妖魚」と、どこか通じる艶かしいさと妖しさがあり、こんなところにも日本を感じました。
戦争
「アッツ島玉砕」という作戦記録画も展示されていました。
これは、1943年5月の北太平洋アリューシャン列島アッツ島での日米の戦闘を、写真と想像力をたよりに自らの意思で描いた作品。
このころ、藤田はトレードマークのおかっぱ髪をばっさり切るなど、「お国のため」という当時の日本の空気に身を染めていたようです。
軍医であった父の影響もあったのかもしれませんね。
動物と子ども
藤田の作品には動物、とくに猫が多く描かれています。
可愛らしい猫もいれば、闘争心にあふれた猫もいて、表情も豊か。
どちらかというと「無表情」の人物画のイメージがあったので、動物たちが様々な表情で描かれているのはちょっと意外でした。
子どもを描いた作品も思ったより多かったです。
ユーモラスでありながら、どこか寂しげな雰囲気の子どもたち。
独特の世界観がここにも強く表れていました。
藤田展の感想
ここのところ、一人の作者の展覧会って減っているような気がしています。
怖い絵展のようなコンセプトに合わせて選ばれた絵の展覧会が増えているかんじ。
コンセプト展にはコンセプト展の良さがあっていいんだけど、エッシャー展や、今回の藤田展のように、一人の作家の生涯を絵で追っていく展覧会は、深く作家を知る機会となりますね。
藤田の作品はもともと好きだったので、その人生にふれ、作品にふれ、ますます好きになりました。
日本画の繊細さをもつ西洋画。
いつかフランスの彼の眠る礼拝堂に行き、フレスコ画を見てみたいです。
京都での会期
東京での会期は終了しましたが、このあと京都での会期があります。
関西方面のかた、ぜひ足を運んでみてくださいね。
会期 2018年10月19日(金)~12月16日(日)
会場 京都国立近代美術館(岡崎公園内)
公式サイト→没後50年 藤田嗣治展
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